イスラムに生まれて 読売新聞中東特派員著
〈内容〉
世界で最も男女平等の実現が遅れていると言われている中東やアフリカのイスラム圏で、知られざる女性の私生活に密着したルポタージュ。
【イスラム圏の子供達】
- イスラム圏では家系を途絶えさせないために男児を産む事を望まれる事が多い。→女の子で生まれると学校に行かせてもらえないことも。(女性は家事を支えることに専念させるため)
- 初潮を過ぎるとヘジャブを被り頭髪を覆い隠すことで男性の性欲を刺激しないようにしなければならない。→「信仰心は心の問題」と「被らない派」の人もいる。
- 中東地域は孤児が多く、その大半が婚前交渉や売春によって生まれた子。→中東では名前が「自分の名•父親の名•祖父の名•父親の姓」の順に構成されるが、孤児はファーストネームだけだったりするので他人に孤児だと知られやすくなる。
- 「割礼」という女性器を切除し性欲を抑制させようとする儀式がある。→割礼により出血多量や感染症で亡くなる子増加し、エジプトでは1997年に禁止されたが、一部の村では今も行われている。
- 多くのイスラム諸国では小学校から高校まで男女を別々にしている。→将来はお見合いで婚姻する。
【若者のおしゃれ】
- 顔以外のほぼ全身を覆う「ブラキニ」が主流になっている→身体を露出するのは禁忌という教えから生まれた。ビキニはプライベートビーチで。
- ヘジャブ(頭髪を覆うスカーフ)も綺麗な巻き方やヘジャブを巻かないという選択をする女性も→差別の対象になってしまう可能性も。
- アバヤのカラーを黒からカラフルにする女性達。
【男に負けない】
- 2018年にサウジで世界で唯一認められなかった女性の自動車の運転が解禁。→免許取得により就職に有利に。
- 自転車に乗ることは「尻の形があらわになる」などで良いとはされていない。→中東諸国では自転車に乗る女性は5%にも満たず、男装をして乗る人もいる。
- 女性がスポーツをすることもあまり良しとはされていない→「運動する女は男に逆らう」とされているため。
- イランでは40年振りに女性のサッカー観戦が認められた。
【少数派の苦悩】
- 女性が裁判官をすることはあまり認められていない→育児や家事で忙しく、生理中ボーッとすると言う理由。
- 中東の裁判では女性に不利な判決が出る傾向がある。
- 女性の証言は二人で「男一人分」→コーランにそういった記述がある。犯人から脅迫されることも。
- LGBTへの対応も厳しい→「性同一障害」と分かると家族に殺される場合もあり、国外に逃げる人もいる。
【恋愛と結婚】
- イスラムでは未婚の間で性行為をすることを禁じている。
- 処女である証として、初夜にシーツに血がついているか確認する風習が→そのシーツを家族に見せるところもある。付いていないと婚約破棄なんてことも。
- 処女の再生手術が人気→75%は偽装処女。
- 「処女=初夜の出血」に異論も→日常生活で破れる可能性も。
- 「名誉殺人」の犠牲になる娘も→新婚初夜まで処女でいられなかった娘を殺す父親が。名誉を実現出来なかったという理由。
- ドバイでは美容整形の中心地→婚活を有利に進めたい女性が多い。
- 美容反対派「神からもらった顔に感謝すべきだ」
- 同性愛者を受け入れない人は多数→コーランでは同性愛を戒める記述があり、国によっては死刑になる。
【結婚】
- 10代前半で結婚させられる娘→年上の夫から暴力を振るわれることも。
- 親が娘を売る場合もある→貧しさからやむを得ず娘を嫁がせ、新郎側から現金や牛を貰い生活する。
- 「早婚から少女を守る運動」も活発化→結婚ではなく人身売買だという強い意見。
- イスラムでは夫は最大四人妻をもうける事ができる→妻同士で嫉妬し合うことも。
- 重婚では離婚率は七割を超える→トルコでは重婚を禁止。禁固刑が科される。
- 強姦加害者と望まない婚約をさせられる女性→結婚前に性行為をしたため、淫らな女性と思われるため無理やり婚姻させられる。
- 「結婚は女の自由を束縛する」→未婚の状態に肯定感を示す女性も。
〈感想〉
イスラム圏はとにかく男性優位な思想が根強く、それが地域や家族といった小さなコミュニティでも深く浸透している。それが女性を生きづらくしている。コーランに書かれていることは解釈の違いがあれど、基本「女は男を誘惑する存在」と書かれており、女性を自由で強い存在にしてはならないという思想が社会の規範となっている。
その中でも前向きに生きる女性も居るし、理不尽な想いをする女性もいる。
だからと言って倫理観や道徳性が遅れているという見方が正しいとは思わない。
国というのは神話があり、その上に宗教があり、さらに上に倫理や道徳性、憲法や法律があって創られる。
日本も神道に基づいた文化や思想があるので、コーランに基づいて生活が営まれているのは変なことではない。だが、それに合わない女性達にはちゃんと逃げ口を作るべきだと思った。