ルポトラックドライバー 刈屋大輔著
〈内容〉
ドライバーに同乗取材し、労働実態をつぶさに捉えた初の本格ルポタージュ!
ネット通販ビジネスは活況で、消費者が便利な生活を享受できる一方、運転手の労働条件は厳しくなっている。現場で今、何が起きているのか?
長期にわたる取材で見えて来た現実とは?
〈感想〉
90年代、運送業は「きつい、汚い、危険」の3Kだったが、その分給与が良く働いている人は多かった。
今は「稼げない」も加わり4Kになってしまった。
給与は平均で500万ほどで、平均年齢も40代とかなり高い。ネット通販が主流になった割に運送界隈はかなりキツい状態なんだなと思った。
勤務時間も長く、週に2日しか家に帰れない人もいるらしく実態はなかなか楽ではなさそうだ。
民間配送業者の参入もあり、競争は激化しているらしく、軽トラドライバーなど小回りのきく配送業者も人気らしい。
イスラムに生まれて 読売新聞中東特派員著
〈内容〉
世界で最も男女平等の実現が遅れていると言われている中東やアフリカのイスラム圏で、知られざる女性の私生活に密着したルポタージュ。
【イスラム圏の子供達】
- イスラム圏では家系を途絶えさせないために男児を産む事を望まれる事が多い。→女の子で生まれると学校に行かせてもらえないことも。(女性は家事を支えることに専念させるため)
- 初潮を過ぎるとヘジャブを被り頭髪を覆い隠すことで男性の性欲を刺激しないようにしなければならない。→「信仰心は心の問題」と「被らない派」の人もいる。
- 中東地域は孤児が多く、その大半が婚前交渉や売春によって生まれた子。→中東では名前が「自分の名•父親の名•祖父の名•父親の姓」の順に構成されるが、孤児はファーストネームだけだったりするので他人に孤児だと知られやすくなる。
- 「割礼」という女性器を切除し性欲を抑制させようとする儀式がある。→割礼により出血多量や感染症で亡くなる子増加し、エジプトでは1997年に禁止されたが、一部の村では今も行われている。
- 多くのイスラム諸国では小学校から高校まで男女を別々にしている。→将来はお見合いで婚姻する。
【若者のおしゃれ】
- 顔以外のほぼ全身を覆う「ブラキニ」が主流になっている→身体を露出するのは禁忌という教えから生まれた。ビキニはプライベートビーチで。
- ヘジャブ(頭髪を覆うスカーフ)も綺麗な巻き方やヘジャブを巻かないという選択をする女性も→差別の対象になってしまう可能性も。
- アバヤのカラーを黒からカラフルにする女性達。
【男に負けない】
- 2018年にサウジで世界で唯一認められなかった女性の自動車の運転が解禁。→免許取得により就職に有利に。
- 自転車に乗ることは「尻の形があらわになる」などで良いとはされていない。→中東諸国では自転車に乗る女性は5%にも満たず、男装をして乗る人もいる。
- 女性がスポーツをすることもあまり良しとはされていない→「運動する女は男に逆らう」とされているため。
- イランでは40年振りに女性のサッカー観戦が認められた。
【少数派の苦悩】
- 女性が裁判官をすることはあまり認められていない→育児や家事で忙しく、生理中ボーッとすると言う理由。
- 中東の裁判では女性に不利な判決が出る傾向がある。
- 女性の証言は二人で「男一人分」→コーランにそういった記述がある。犯人から脅迫されることも。
- LGBTへの対応も厳しい→「性同一障害」と分かると家族に殺される場合もあり、国外に逃げる人もいる。
【恋愛と結婚】
- イスラムでは未婚の間で性行為をすることを禁じている。
- 処女である証として、初夜にシーツに血がついているか確認する風習が→そのシーツを家族に見せるところもある。付いていないと婚約破棄なんてことも。
- 処女の再生手術が人気→75%は偽装処女。
- 「処女=初夜の出血」に異論も→日常生活で破れる可能性も。
- 「名誉殺人」の犠牲になる娘も→新婚初夜まで処女でいられなかった娘を殺す父親が。名誉を実現出来なかったという理由。
- ドバイでは美容整形の中心地→婚活を有利に進めたい女性が多い。
- 美容反対派「神からもらった顔に感謝すべきだ」
- 同性愛者を受け入れない人は多数→コーランでは同性愛を戒める記述があり、国によっては死刑になる。
【結婚】
- 10代前半で結婚させられる娘→年上の夫から暴力を振るわれることも。
- 親が娘を売る場合もある→貧しさからやむを得ず娘を嫁がせ、新郎側から現金や牛を貰い生活する。
- 「早婚から少女を守る運動」も活発化→結婚ではなく人身売買だという強い意見。
- イスラムでは夫は最大四人妻をもうける事ができる→妻同士で嫉妬し合うことも。
- 重婚では離婚率は七割を超える→トルコでは重婚を禁止。禁固刑が科される。
- 強姦加害者と望まない婚約をさせられる女性→結婚前に性行為をしたため、淫らな女性と思われるため無理やり婚姻させられる。
- 「結婚は女の自由を束縛する」→未婚の状態に肯定感を示す女性も。
〈感想〉
イスラム圏はとにかく男性優位な思想が根強く、それが地域や家族といった小さなコミュニティでも深く浸透している。それが女性を生きづらくしている。コーランに書かれていることは解釈の違いがあれど、基本「女は男を誘惑する存在」と書かれており、女性を自由で強い存在にしてはならないという思想が社会の規範となっている。
その中でも前向きに生きる女性も居るし、理不尽な想いをする女性もいる。
だからと言って倫理観や道徳性が遅れているという見方が正しいとは思わない。
国というのは神話があり、その上に宗教があり、さらに上に倫理や道徳性、憲法や法律があって創られる。
日本も神道に基づいた文化や思想があるので、コーランに基づいて生活が営まれているのは変なことではない。だが、それに合わない女性達にはちゃんと逃げ口を作るべきだと思った。
東京貧困女子 中村敦彦著
〈内容〉
ライター中村敦彦が東京に住む貧困層の女性に取材をした東洋経済オンラインの連載「貧困層に喘ぐ女性の現実」をまとめたもの。
風俗で学費を稼ぐ国立現役女子大生の実態や、家族からの虐待や貧困が原因で精神を病み社会復帰する事ができない女性へのインタビューなどが掲載されている。
〈感想〉
とにかく唖然とした。というか、自分が今まで生きてきた中でこういった人達には会った事がなかったので、本当にこの本は事実が述べられているのか疑ってしまうほどだった。
対岸の火事と思ってしまっている自分がいるのは認める。東洋経済オンラインのコメント欄が荒れたという箇所もなんとなくわかってしまうというか、たぶん大概の人はこの出来事を認めたくないのだと思う。
社会にとって一般的な働き手だったり理想の暮らしが叶う人達は今や限られているのではないだろうか。また、生活に困窮している人達が意外にも生活保護という制度を知らないと言う実態があったのも驚きだった。
頭は「本の読み方」で磨かれる 茂木健一郎著
〈内容〉
「本を読む」ことはどう重要であるのかを説いた一冊。
茂木健一郎なりの「本の選び方」「味わい方」「実践への繋げ方」を明らかにしたもの。
『人が成長すれば本も成長するのであって、その意味で本は「自分という人間の成長を映す鏡」でもあります。』
これが自分の頭で考える力をつける第一歩
【読んだ本の数だけ高いところから世界が見える】
- 「本を読む」ということは「自分の経験を増やす」こと。
- 読んで巨人の肩に乗る。→頭の中に蓄積することで発酵し「知性•経験」として定着する。
- 本は著者や編集者など何人もの知恵が凝縮され、練り上げられた文章の塊である。
【「優等生」ではなく、「オタク」を目指す】
- 情熱は脳の最強のエンジン。→オタクの人は皆「自信を持って情熱だけはあると言える」
- 本当に好きなことにのめり込んでしまうことが充実した学びを得られる1番の近道→「情熱」は「優等生」であることよりも、ずっと重要。
【「知的な付加価値を作れる人」の頭の中】
- 自分で世界を変えるような技術を生まなかったとしても、自分で世界の動きを知る力を身につけておくことは大切。
- 一冊の本というのはたとえその全てを理解する事ができなくても、十分に「今、世界で起こりつつあることの雰囲気」を伝えてくれる。
- どうしたらコミュニケーションが上手くいくかという「こと」や、頭が良くなるかという人生の「こと」に関しては、説明書を読むだけでなく、経験しないと本当の意味は分からない。
自分を成長させてくれる本の見つけ方
【なぜいい本は「会話のネタ」になるのか】
- 「いい本」の見極めポイントは「それについて語りたくなるかどうか。
- ベストセラーは口コミによってつくられる。
- 情報収集は「弱いつながり」から→人間は「○○がないと幸せになれないのでは…」と一つのものにこだわって逆に不幸になる(フォーカシング•イリュージョン)。
- 重要な情熱というのは弱い関係の人達からもたらされる事が多い→苦手な人、ご近所のちょっとした知り合い、そういう人達ともゆるくつながることが大切。
- 「雑談する力」というのは、人間の持つ「圧倒的な知性」
【脳には「雑食」がよい】
- どんなネタがいい仕事に繋がるか分からないところが、人間のおもしろいところ。
- どの本がどう役に立つかという事はわからないけれど、たくさん本を読むと、それが腐葉土のように発酵して脳の中にいい土壌ができる。
- 何が自分の役に立つかということは、本当はわからないもの。
- 「すべてが正しい本」は存在しない→著者が力を尽くして書いた文章にできるだけ多く接し、自分の中に新しい何かを育てていくこと。それが読み手が実践すべき「学び」である。
【「複数」を「同時進行」で】
- 「読書を習慣にするコツ」は、真面目すぎずいい加減に。→「あんまり気が乗らない」という本を、何日もかけて最後まで読み通さなくてよい。
- 自分の感覚(センス)を見つける、自分の判断力を見つける→どんな偉い人の意見も、どんな絶対と言われている教科書も「One of them(無数の中の一つ)」にすぎない。
- コピペは脳を劣化させる。
- 速読を使いこなす→速く読んで50%くらい分かれば十分。
- 「飽きちゃう」本はサクッと読んで次へ行く→面白そうな見出しがあれがその項目は重点的に読む。全体的にパラパラとめくり、「だいたい」のポイントを把握する。
〈感想〉
「本の読み方を知る」本を読んだのは初めてだった。読書の手引き書としていいと思う。